今、日本中にある多くの商店街は衰退してきており、特に地方都市においては消滅の危機にあります。
商店街は主に駅前やまちの中心地という立地の良い場所にあり、かつては「交通アクセスの良さ」や「何でも揃う利便性」から、たくさんの地域住民に利用され、賑わってきました。
しかし近年は、
中心市街地から郊外への人口流出、
「自動車で買い物をする」という消費者のライフスタイルの変化、
相次ぐ大型商業施設の郊外での出店などにより、
中心市街地にある商店街を利用する住民は激減しました。
そんな消滅の危機にある「商店街の再生」はどのようにしていけばよいのでしょうか?
今回は、商店街を再び人が集まる場所に変えていくための、再生方法について考えていきましょう!
目次
商店街は「まちの顔」である
先述のとおり、商店街の多くは駅前や商業地などの立地の良い場所にあります。
そのため、その地域を訪れる人が最初に目にする風景が「商店街の風景」なのです!
その商店街に人通りがなく、殺風景な空間であれば、
訪れた人はそのまちにどのようなイメージを持つでしょうか?
また、
そのまちに住んでいる地域住民にしても、
かつては賑わっていた場所が、今や見る影もなく寂しい場所になっていたら、
そのまちを好きでいられるでしょうか?
商店街とは、単なる「消費をする場所」である以上に、
地域の印象を決定づける「まちの顔」なのです!
また、誰しもが自動車で買い物ができるわけではありません。
地域の高齢者や若者が徒歩で安全に楽しく買い物ができる場所が、どこの地域にも必要です。
「商店街の衰退」という問題は、単純に商店街やそこにある商店だけの問題ではなく、まち全体にとてつもなく大きなダメージをもたらすものなのです!
商店街に求められている変化とは?
商店街といえばあらゆる種類の商店が集合している場所ですが、かつては青果店や鮮魚店、精肉店などの生鮮食料品店や小売店がメイン店舗として存在していました。
しかし、商店街の専門店で売れらていたほとんど全てのものが、今やコンビニやスーパーマーケット、ドラッグストア、ショッピングモールなど他の店舗で買えるモノばかりになってしまいました!
さらにそのような大手企業が経営している大型店舗では、駐車場も完備されているため車で買い物に出掛ければあらゆる品物がまとめて購入できます。
そして、今や買い物に出かけなくてもインターネットで何でも揃ってしまいます!
そのため、わざわざ駐車場がないような商店街に出掛けて、個人経営の専門店ではしごしながら買い物をする人はほとんどいないでしょう。
さらに、かつての地域密着型の商店街では、豆腐屋や自転車屋、和菓子屋、乾物屋、畳屋、布団屋、クリーニング店など、地域住民の日常生活には欠かせない店舗がその多くを占めていました。
しかしその中には、今の消費者のニーズに合っておらず、残念ながら利用客が激減してしまった店舗も数多くあります。
それぞれの店舗の利用客がいなくなってしまっては、商店街自体に人がやってこないことは明白でしょう。
商店街で販売しているものが生鮮食料品や日用品だけでは、大企業企業が運営するような大きな店舗やインターネットを相手にしても、勝ち目はありません。
ではいったい、どうすればよいのでしょうか?
その答えは、スローフードを提供する飲食店が集まった「フードホール」と、店主のこだわりが見えるライフスタイルショップが集まった「ライフスタイルセンター」を目指す必要があります!
商店街を「ライフスタイルセンター」にしよう!
「ライフスタイルセンター」とは?
ライフスタイルセンターは、21世紀に入ってからアメリカで流行した新しいタイプのショッピングセンターの形態です。
核となる大きな店舗はなく、それぞれの個性を活かしたライフスタイルショップが集積した複合型店舗の形態となっています。
そして、ひとつの建物の中にそれぞれの店舗があるのではなく、店舗と店舗を屋外にある通路や広場で繋いでおり、自然豊かで解放感のある空間が特徴です。
ただ買い物を楽しむだけの場所ではなく、気持ちの良い空間で寛ぎながら、家族や地域の人とのコミュニケーションも楽しむことができ、地域内の「第3の居場所」としても注目されています。
ライフスタイルセンターは、まさに商店街の良さを活かすことのできる新しい店舗の業態であり、長期低落化している街なかの商店街を勝ちパターン化させうるものとして期待できます!
そしてそれは、地方都市の中心市街地の再生に最も適した業態とも言えます。
そこは「地域の交流の場」であり、自然や健康といったエコロジーの考え方を重視したビジネスモデルとなっています。
「ショッピングセンター」と「ライフスタイルセンター」の違い
日本では現在、イオンモールをはじめとした「郊外型ショッピングセンター」が席巻しつつあります。
「ショッピングセンター」は、施設自体が大きな一つの建物で、通路等が建物内にあり天候に左右されない閉鎖的なタイプです。
一方、アメリカをはじめ、今非常に注目を集めているのが、屋根を排し店舗を結ぶ通路が屋外にあるオープンエアー型の「ライフスタイルセンター」です。
自然と一体化したメインストリートや中庭などがあり、立地の特徴を活かして形態です。
閉鎖的なショッピングセンターようなエンクローズド・モールはもはや過去のものとされています。
従来型のショッピングセンターは、共用空間に冷暖房設備がありベンチが設置されていますが、ライフスタイルセンターでは共用空間がコミュニティの場であり、「地域の顔」となっています。
20世紀が生んだ最強の店舗業態が「ショッピングセンター」であるのに対し、「ライフスタイルセンター」は21世紀に最適な店舗形態と言われています。
そして、「ショッピングセンター」では、主に核となるような店舗を設置するのですが、「ライフスタイルセンター」ではアンカーテナントは設置しません。
フリースタンディング店舗の集積型施設であり、来場者にとって買い物をするだけでなく、長期滞留して自分なりのライフスタイルを楽しむ憩いの場となっています。
ライフスタイルセンターでは、多くの人々が爽快感を味わえる屋外通路や中庭など設置されており、その周りにくつろぎのためのベンチや休憩施設を配備して、長時間滞留したくなるような場となっているのが特徴です。
ライフスタイルセンターを形成する店舗とは?
ライフスタイルセンターに集まる店舗は、店主やスタッフがこだわりのある商品やサービスを提供する「ライフスタイルショップ」である必要があります。
「ライフスタイルショップ」については、以下の記事をご覧ください!
それは、従来型ショッピングセンターによくある大手チェーン店やファストフード店で構成されているのではなく、地域密着型であり独自の空間・商品・サービス等を提供する店舗であることが重要です。
それらの店舗が集積することによって、街なかの商店街や商業エリアそのものが「ライフスタイルセンター」となるのです。
ライフスタイルセンターが商店街に適している理由
①本来の商店街の役割を継承できる
既存の商店街を「ライフスタイルセンター」にすることによって、郊外のショッピングセンターが真似のできない優位性と異質性を持った新業態として、商店街を再生させることが可能です。
それは、元々商店街が持っている「地域交流の場・人が集える場づくりの要素」「人的ふれあいのある地域密着性」などの要素と、ライフスタイルセンターが持つ要素を融合することで、本来の商店街よりも更に幅広いニーズを持つと考えられるからです。
現代では、少子化や地域の過疎化、ライフスタイルの多様化などによって、人と人とのつながりが弱くなってきた、と言われています。
ライフスタイルセンターでは
「どうしたら地域が活性化されるか?」
「どうしたら人同士のつながりが強くなるか?」
を解決できる手法なのです。
『人とのつながり』つまり『コミュニティ』を活性化するためには、まず「人が集まること」が重要となります。
そして、人が集まるには、”集まるための場所”を用意しないといけません。
ライフスタイルセンターの特徴である、ついつい長居したくなる「居心地の良いスペース」を作ることで、顧客の満足度がUPすれば、いずれ口コミで広がります。
そして、話題性が生まれれば、より多くの人々が利用してくれる商店街になるでしょう。
②現代のニーズにあった「生活提案」型店舗がある
「人がどんなことに集まってくるのか?」
人々がこれから求めることは、”過ごす時間”です。
もっと言うと、”暮らし”を提供できる場所を目指せるか、がカギです。
なぜなら、多くの現代人が求めるのは、モノではなく”コト”だからです。
『買い物しかできない商店街』ではなく『生活の一部になれるような商店街』を目指しましょう。
ネットが当たり前になっている今は、モノや情報であふれています。
モノや情報に満足したら、次に人々が求めるのは”生活、暮らし”そのものなのです。
ライフスタイルセンターでは、地域の人々への地域に密着した「生活提案」を行いやすいことが挙げられます。
新たな生活創造に対応することが「生活提案」であり、その内容はライフソリューション(生活上の問題解決=こんなことをして欲しかったと感じる商品)とライフクリエーション(生 活上の新生活の創造=こんな生活があったのかと感じる商品)です。
それは、高級志向やトレンド志向ではなく、地域のニーズに対応した日常の生活の中での新しさを感じる商品を提供しやすい、ということなのです。
③居心地の良い空間の演出
美しい樹木や花々に取り巻かれ、豊富なくつろぎの設備や人への優しい配慮を施されたこの空間は、まさに「購買施設」を超えた脱日常的な憩いと潤いの人間空間を形成しているといえます。
ライフスタイルセンターでは、そのような居心地の良い空間を演出するために、以下のような工夫をしています!
- 休憩場所が多い
- 自然豊かなエリアがある
- 家族が楽しみながら過ごせる場がある
- 厚めのクッション付きのベンチ
- 緑や花が豊かに飾られている空間
- 天然木材のウッドベンチやテーブル
近年では、ドリンク片手に自然を楽しみながら、談笑できるような、そんな”くつろげる空間”への演出力が高まっています。
結論、商店街を活性化させたいなら、パブリックスペースを充実させましょう。
商店街に「フードホール」をつくろう!
フードホールとは?
商店街を再生させるためには、ライフスタイルセンターの他に「フードホールをつくる」という方法もあります。
最近、「フードホール」という言葉をよく耳にするようになってきており、日本でも見かけるようになってきました!
この「フードホール」とはいったい何でしょうか?
フードホールとは、
手のかかった料理やお酒を出す複数の飲食店と客席が“ひとつの空間”の中にあり、どの席に座ってもいろんな店のメニューが注文できる『複合レストラン』のことです。
例えば以下のようなものです!
フードホールは、ヨーロッパ発祥でありますが、後にニューヨークで爆発的に流行した飲食店の新しいスタイルなんです。
最も有名なのは何と言っても「チェルシーマーケット」でしょう!
アメリカでは今、フードホールがとても人気となっており、その数は年々増加し続けています。
フードホールとフードコートの違い
同じような形態として思い浮かぶものは「フードコート」だと思います。
日本でもショッピングセンターでよく見かけるものですね。
しかし、
この「フードコート」と「フードホール」はどこが違うのでしょうか?
主に「フードコート」は、安さを売りにしたファストフード店が集合しています。
お酒を提供する店もあまり多くはありません。
一方、「フードホール」は、やや高級志向であり、ちゃんとしたお酒も提供するバールやレストランの集合体です。
「フードコート」はショッピングセンターなどで買い物客が休憩するために設置されているものですが、「フードホール」はそこでの飲食を楽しむことがメインなのです!
そして、「フードホール」はこだわりの食事やお酒を提供しているため、総じて客単価が高くなるという特徴もあります。
フードホールに適した飲食店とは?
商店街に「フードホール」をつくるためには、ただ飲食店を集めればいいかというと、決してそうではありません。
それぞれが「フードホール」をつくるためには、それぞれが『こだわりの料理が提供できる飲食店』である必要があります!
そこで重要になっているのが、「スローフード」という考え方です。
スローフードとは、
「その土地ならではの素材を活かした食べ物を食べること」です。
例えば、フードホールに適している飲食店は以下のようなものです。
- 地元食材を使ったイタリアン・レストラン
- 旬のフルーツを使ったスイーツ店
- サンドウィッチやベーグルが美味しいカフェ
- こだわりのお酒が楽しめるバール
- カジュアルなフレンチ
- 採れたての魚が味わえる日本料理店
- 手のかかったカレー店 など
フードホールが商店街再生に適している理由
先述したように商店街は駅近などアクセスの良いところにあることが多いです。
そのため、お酒を提供するような飲食店は、車でしか行けないような郊外よりも、商店街のあるまちの中心地でお店を出す方が都合が良いです。
そしてなにより「フードホール」の良さは、いろんな種類のお店が集まって出店できることです!
そもそも人通りが少なくなってしまった場所にいきなり一店舗だけを出店しても、よほどの有名店や人気店でない限りは、なかなかお客さんが来てくれることはないでしょう。
しかし、提供するものにこだわりがあり、地元の食事が楽しめる飲食店が複数集まっている場所であれば、話題性もあり、たくさんのお客さんが集まってくれる可能性は非常に高いです。
また、「それぞれのお店のお客さんが、その他のお店のお客さんになる」と考えるだけでも、ひとつの店舗だけを出店させるよりも、通常より何倍にも多いお客さんが増えることが容易に考えられます。
さらに、商店街がフードホール化していれば、歩きながらお店からお店へはしごしたりしながら、まちを楽しむことができるようになります。
まちの中心にある商店街をフードホール化させることは、まち全体にも良い影響をもたらします。
地方の中心市街地では、昼にも増して夜になるとさらに人気がなくなります。
それは夜になると会社や店舗が一斉に閉まってしまうからですが、お酒を提供するような店舗が増えることで、まちのナイトタイムエコノミー(夜間経済)が活性化させることができます。
地方都市の観光戦略にとって、このナイトタイムエコノミーはとても大切なことです。
それは飲食店が賑わうだけでなく、観光客がそのまちで夜に飲食をすることで、そのまちで宿泊する可能性がとても高くなるからです。
まちによっては、「屋台村」をつくったことで、夜の観光地として賑わい、実際に観光客が増加したことで、まちなかが活性化した地方都市があります。
屋台村は地場産品が味わえ、店主やお客同士とのコミュニケーションが楽しめることが特徴です。
まちの中心にある既存の商店街を「フードホール」にすることで、同じような効果を期待することができるようになります!
もはや商店街は「買い物をするだけの場所」では勝てない
商店街を「明るく開放的な空間」に
商店街によくあるアーケード。
これは買い物客が雨を降った時でも傘をささずに買い物ができるというメリットがありますが、本来、アーケードが設置されている目的はそれだけではありません!
アーケードは、かつて商店街にたくさんあった生鮮食料品や日用品などが直射日光によって、傷んだり、劣化したりするのを防ぐために、設置されたものなんです。
しかし、生鮮食料品店や日用品店を取り扱う店舗が商店街から激減し、あったとしても空調機能が発展した現在、アーケードはあまり必要と慣れていません!
むしろ商店街にアーケードがあることによって、閉鎖的で暗い印象になってしまい、ひと気のない商店街はより寂しい印象になってしまいます。
また、商店街にライフスタイルセンターやフードホールをつくろうとすれば、明るく開放的な空間を生み出す必要があり、アーケードがあることによってできる薄暗い空間はあまり適しません!
傘を差さずに移動ができる道路として利用されることはあるかもしれませんが、商店には入らずただ素通りされるのが落ちです。
アーケードがあることによって、商店街側にさほどメリットはないでしょう。
そればかりか、維持管理費や改修費に膨大な予算を取られることになります。
いっそアーケードは撤去してしまいましょう!
今の時代は、明るい太陽の下で開放感あふれる街路風景を楽しみながら充実したゆとりのある時を過ごしたいという人々が増加しています。
商店街は、地域の人々によっての「絶好の憩いの場」を提供してくれる施設となり得るのです。
テナントミックスで優れた店舗を集めよう!
ではいったい商店街に「ライフスタイルセンター」や「フードホール」をつくるためには、どのようにすればいいのでしょうか?
そのためには、商店街やまちづくり会社のような組織が「テナントミックス」という手法を使って、有力なライフスタイルショップは飲食店を集めてくることがとても有効です。
通常の商店街にある店舗規模の「ショップ」をテナントミックス手法で次々と生み出していくことで、街として「ライフスタイルセンター」や「フードホール」の機能に近づけることが効果的なのです。
自然志向、健康志向、元気志向、地域密着志向を切り口としたテナントミックスや、各店舗の商品構成の中にこれらのこだわり商品を組み込むことで、個性のある商店街を目目指していけるようになります!
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そのヒントは、
「ライフスタイルセンター」と「フードホール」にあります!