耳が聞こえづらくなった、目が悪くなった、
物忘れするようになった、よくつまづく、いつも腰が痛い・・・
高齢者になると体のいたるところに、いろいろな症状が出来てきます。
どのような症状がいつ頃出てくるのでしょうか?
それらの症状に対処する方法はあるのでしょうか?
今回は高齢になると出てくる体の変化について、解説していきます!
最近、歳のせいで体に異変を感じるようになってきた、
また仕事や家庭で高齢者の方と接することが多い人は必見です。
目次
加齢に伴う体の変化とは?
高齢期になると、ヒトの体にはどのような変化が起きるのでしょうか?
このことについて、なんとなくはわかっていても、
ちゃんと理解している人は、実はとても少ないです。
誰しもが年を取り、老いていきます。
そして、老いていけば体のいたるところの機能が低下していきます。
しかし、人は自分の体の老いを簡単に認めようとはしません。
目や耳が悪くなってきても「大丈夫だ」と考え、
放置してしまっている間に悪化している、なんてことがよくわります。
人は老いることに抵抗があり、
自身の体の変化を受け入れることはなかなかできないのです。
しかし今、超高齢社会となった日本では、
高齢者が増えることによって様々な社会問題が発生すると考えられています。
高齢に伴う体の変化を知っていることは、
高齢社会課題を考える上で重要なカギとなるのです。
加齢に伴う機能変化は、大きく以下の3つに分類されます。
- 身体(肉体)機能の変化
- 感覚(五感)機能の変化
- 認知機能の変化
それでは、順番に見ていきましょう!
身体(肉体)機能の変化
「身体(肉体)機能の変化」とは文字通り、身体面に起こる変化のことです。
自覚症状が増えるのは50代から
身体(肉体)の加齢変化は、おおむね30代後半~40代から始まります。
体型や肌など外見に現れる変化もあれば、
目の見えづらさや痛み、しびれなど、さまざまな内的な具合の変化もあります。
最初に現れるのが、白髪、シミ、シワなどです。
基礎代謝量が低下して太りやすくなったり、
体力や筋力の低下で疲れを感じやすくなったりもします。
50~60代に入ると、
日常的に何らかの有訴(病気や怪我などで自覚症状のあるもの)を感じる割合が増え、
通院する率も次第に増えていきます。
男性の場合、高齢期に増えるのは腰痛で、
次いで聞こえの悪さ、物忘れ、頻尿、物忘れ、手足の動きの悪さ、便秘さどが並びます。
女性は若い頃から腰痛や肩こりに悩まされる人が多いですが、
年を重ねると手足の関節の痛みを増えてきます。
70代からは、物忘れ、聞こえの悪さ、目のかすみなども増加します。
後期高齢期になると腰が曲がり、
徐々に前傾姿勢(円背、亀背)となる人も多くなります(特に女性に多い)。
前かがみになると、視線は下方向に向きます。
また、姿勢が変化すると重心の位置がずれてつまずきやすくなるため、
その不安から歩行中に足元ばかりを見るようになります。
その結果、周囲の状況に気がつかず事故を招く場合もあります。
さらに、関節の動きが鈍くなり手足の可動域が狭まる、
動体視力が衰えて機敏な反応ができなくなるといった老化による変化で、
転倒した際にうまく防御姿勢が取れずに重篤となるケースも増えます。
歩くことの困難さが転倒を引き起こす
日常生活を送るうえで大切な機能の一つに、「歩けること」があります。
数百メートル歩くことを困難と感じる人は、
70代前半では10.2%ですが、
70代後半になると17.2%、80代では28.6%まで増加します。
80代では、3人に1人弱が歩行困難を感じているのです。
一般に、歩行困難に感じるのは女性が多いとされています。
女性は加齢により骨代謝に関わる女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、
骨粗しょう症の発生リスクが高まります。
もともと男性と比べて筋肉量が少ないこともあり、
歩行困難(要介護状態)となる率が高いのです。
女性の場合、
「関節疾患」や「骨折・転倒」などが原因で要介護状態となる率が高くなっています。
握力の低下による日常動作の変化
握力にも大きな変化が見られます。
40代では40kg(男性右手)、20kg後半(女性右手)だったのが、
80代には20kg後半(男性右手)、10kg後半(女性右手)まで低下します。
男女ともに、80代には成年時の7割程度まで握力が落ちるのです(国立長寿医療研究センター調査)。
特に、女性の握力は男性の6割程度です。
握力が弱まれば、重い物を持ったり、
容器やパッケージを開けたりする際に困難が生じます。
容器類は、中身をこぼさずに効率よく輸送できることを念頭に設計されるため、
高齢者でなくとも開けづらさを感じることは往々にしてあります。
感覚機能(五感)の変化
「感覚機能(五感)の変化」とは、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の変化のことです。
情報量の低下につながる視覚の衰え
感覚器官も加齢とともに機能が低下しますが、
最も早く衰え始めるのが視覚です。
一般に、人間は情報の8割以上を視覚から得ているといわれています。
したがって、視覚の衰えは、得られる情報量の減少を意味するのです。
視覚の老化では、
ちいさな字が読みづらくなる、
明るさや暗さへの反応が遅くなる、
暗い場所での判断力が落ちる、
まぶしさへの感じ方が強くなる、
視野角が狭くなる、
特定の色彩が見えづらくなるなどの症状が起こります。
人間の目をカメラに例えると、
絞りの役割を果たすのが瞳の虹彩です。
高齢期にはこの調整機能が低下し、
地区に明るい場所から暗い場所に入った際の暗順応に時間がかかるようになります。
例えば、
上映中の映画館やコンサート会場に入ったときに、
高齢者は暗い環境に慣れるのに時間がかかるのです。
また、高齢者は対象をきちんと見るために、
より多くの光量が必要になります。
光を受容する機能が老化するためです。
同じ文字の判読に、高齢者は30代の3倍の明るさを必要とするといわれています。
さらに、
カメラレンズにあたる水晶体の内部が混濁(黄ばみと汚れにより白内障化)し、
目に入ってきた光が乱反射を起こすようになります。
まぶしさを感じる度合い(グレア感)が高まるので、
高齢者は光源がむき出しの照明だとまぶしく感じる割合が高くなります。
視野については、上下方向の狭まりが顕著です。
加齢でまぶたの筋肉が下がること、
姿勢が前傾して目線が下に向くことで、特に上方向の視野が狭くなります。
また、白内障化が進んだ結果、
近紫外線領域(300~400nm)から短波長(400~450nm)、
中波長(450~500nm)の透過率が下がり、
黄色や青色などの色彩が見えづらい、
コントラストの弱い(明度差・彩度差)デザインの文字と背景の認識度が低くなる
といった変化が出てきます。
高い声が聞こえづらくなる
聞こえの問題は、おおむね50代前半から徐々に生じ、
80代では日常生活に不便を来す割合が増加します。
いわゆる難聴は、
伝音性難聴(外耳から前庭窓までの伝音機構障害)と
感音性難聴(内耳から大脳中枢に至る経路での障害)に分類でき、
高齢者の聞こえ問題は主に感音性難聴に起因します。
感音性難聴では、
聞こえの最小可聴値が上昇することに加えて、
音の聞こえ方に歪みをともなうことが多いです。
最小可聴値の上昇は、
高音域(2kHz以上)で顕著で、
女性よりも男性の方が聞こえづらいようです。
難聴を補助する様々な補聴器が開発されていますが、
見栄えや違和感を気にする人は多く、
実際に装着されている数は難聴者の実数よりもはるかに少ないのが現状です。
また、高音域が聞き取れなくなるという点では、
音の大きさについて留意する必要があるでしょう。
騒音のほうが音声音量よりも10dBほど(3倍程度)高いと
音声が聞こえづらくなると言われます。
例えば、災害放送などで高齢者に注意喚起を図る際は、
周囲の騒音音量を考慮した音量設定にすることが重要です。
濃い味付けを好みがちになる
味の感じ方にも変化が生じます。
味覚は下表面にある味蕾の味細胞が情報を脳に送ることで、
甘味・苦味・酸味・塩味を感知します。
後期高齢期になると味蕾が縮小・減少するため、味覚に変化が起きるのです。
内服薬や義歯の使用、口腔内の清潔状態なども味覚に影響を及ぼします。
味覚のうち、まず塩味と甘味に対する感度が低下し、
次いで苦味と酸味をの感度が低下します
(喫煙習慣のある人の場合はさらに感度が低下)。
高齢者に濃い味付けを好む人が多いのは、
この感度低下によるところも大きく、塩分・糖分の過剰摂取の一因になっています。
この他、後期高齢期になると、
口の中が渇きやすい、むせやすい、せき込みやすい、食後に声がしゃがれてしまう
などの症状も起きやすくなります。
感覚が鈍り、ぶつかりやすくなる
感覚細胞の老化により、
熱さ、寒さ、痛みなどの感度も低下しやすくなります。
本人が気づかぬうちに怪我をしていたり、
事故に遭うケースも起こります。
「知らないうちに(どこかにぶつけて)手や足にあざができていた」
という高齢者の話はよく聞きますが、その一例です。
触覚の低下により、
作業が実行できているかどうかがわからなくなるというケースもあります。
例えば、銀行ATMのタッチパネルで、
「実際にボタンが押せているかどうか、わからない」
という高齢者を見かけることがあります。
こうした状態を回避するためには、
ボタンを押した瞬間に画面が振動するなど、
他の感覚機能で認識を促す手法が有効でしょう。
近年、夏になると
「熱中症で倒れた高齢者を病院へ搬送」といった報道をよく目にしますが、
これは体温調節機能の低下によるものです。
一般に、暑くなれば汗をかくことで体温を下げます。
しかし、高齢者は汗をかきにくく、
体内水分が少ないにもかかわらず水分摂取量も少ない。
暑さの感じ方も弱くなるので対応も遅れてしまい、
その結果、体内に熱がこもって熱中症を引き起こしてしまうのです。
また、高齢者には冷え症も多いですが、
これも寒暖に対する感覚が鈍るため。
冷房の効き過ぎに気づかず、調子を悪くしてしまう人が多いのです。
例えば、高齢者が多く利用するような施設では、
サービス提供者側が気をつけて温度管理を行う必要があるでしょう。
体に直接冷房の風が当たるような場所をできるだけつくらない、
外気温度と室内温度の差を大きくしずぎない、
設定温度をこまめにチェックするなどの配慮が求められます。
一部の食品スーパーでは、
冷房ケースからの強すぎる冷気で体調を崩してしまう高齢者もおり、
鮮度管理、利用者の体調管理の両面から配慮が必要です。
認識機能の変化
「認知機能の変化」とは、脳の機能の変化のことです。
記憶力の低下
加齢にともなう認知機能の低下には、
理解力や判断力の低下、言語理解能力の低下などがありますが、
最も多くの人に現れるのは記憶力の低下です。
人の名前が思い出せない、
買い物で買うべき物を失念してしまう、
今しがたまで何をしていたか一瞬忘れてしまう・・・
など日常生活の中で「記憶に関するトラブル」が発生するのは高齢期の特徴です。
物忘れすることが続くと、
冗談交じりに「このままいくと、認知症になるのでは?」
という不安が頭をよぎりますが、
自覚のある物忘れ(生理的健忘)と認知症とは別物です。
記憶は保持される時間の長さで、「短期記憶」と「長期記憶」に分類されます。
短期記憶は、新しい情報を意識的に貯めておく能力で、
短期記憶の情報が忘却されることなく蓄積されたものが長期記憶となります。
短期記憶は、単純に得た情報を原型のまま覚えようとするものですが、
この得た情報に一定の加工を加える場合は「作業記憶」(ワーキングメモリ)
といわれます。
例えば、「繰り上げ算」のような比較的簡単な計算を行ったり、
電話番号を一時的に覚える場合などがそうです。
単純に一定の情報を記憶に留める短期記憶は、
加齢による影響をさほど受けず、高齢になっても能力が維持されます。
一方で、作業記憶は加齢とともに明らかに低下していきます。
ただし、作業記憶は訓練によって加齢低下を一定程度留めることが
可能といわれています。
長期記憶は、短期記憶で得た情報が長期保存用に貯蔵され、
必要に応じて取り出されるものです。
長期記憶に保存された情報は、
思い出されることで繰り返し再生できます。
長期記憶は加齢とともに大幅に低下しますが、
特に顕著なのが「記憶の獲得」と「記憶の再生」。
つまり、「覚えられない」「思い出せない」ということです。
長期記憶は、
内容により「エピソード記憶」「意味記憶」「手書き記憶」などに分類されます。
エピソード記憶は、自分の過去の経験や出来事に関わる様々な思いです。
「友達にこんなこと言われた」「あの時は雨が降っていた」といった
個人的記憶がこれに当たります。
意味記憶は、思い出とは関係ない、
いわゆる「知識」に当たるものです。
意味記憶が、自己が介入しない抽象的な記憶で、
きっかけがないと思い出せないのに対して、
エピソード記憶は、加齢による影響はあるものの、
意識すれば比較的簡単に思い出すことができます。
一方、手続き記憶は、
自転車に乗る、ピアノを弾くといった、
学習された運動機能の記憶であり、
これは加齢の影響をさほど受けることなく維持されます。
種 類 | 内 容 | 加齢の影響 |
---|---|---|
短期記憶 | 数秒から数分の間、覚えておく記憶 | ほとんど影響なし |
作業記憶 | 短い時間、あることを記憶に留めておくと同時に、認知的な作業を頭の中で行う記憶 (例えば、「5-4-3-2」と聞いたら、「2-3-4-5」と答える) | 影響が顕著にみられる |
エピソード記憶 | ある特定の時間と場所での個人にまつわる出来事の記憶 (例えば、「朝食で何を食べたか」「昨日どこに行ったか」) | 影響が顕著にみられる |
意味記憶 | 誰もが知っている知識についての記憶 (例えば、「消防車は赤」「日本の首都は東京」) | 影響は(ほとんど)ない |
手続き記憶 | 学習された運動機能の記憶 (例えば、自転車に乗る、スポーツの技能) | 影響がなく、維持される |
展望記憶 | 将来に関する記憶 (例えば、友人と会う約束に時間や場所、特定の時間に薬を飲む) | 影響がみられるようだが、理論的には議論の余地あり |
わすれやすさにどう対応するか?
年を重ねると物覚えが悪くなると言われますが、
最も大きな原因は、神経細胞の老化よりも、
新しいことを学ぼうとする好奇心や興味の低下です。
そうした高齢者の忘れやすさへの対応としては、
「外的記憶テクニック」と「内的記憶テクニック」の2つがあります。
外的記憶テクニックは、
買い物リストのメモを作成する、
カレンダーに予定を書き込む、
目に付く場所に置いておく、
といった外部の物品や空間などを活用して記憶の代替手段にしようとするものです。
例えば、
高齢者の顧客に備忘のためのメモを積極的に渡す、
(新聞記事やチラシなどを)切り抜きやすくする、
メッセージを財布に入れやすい大きさで作成する、などの工夫が考えられます。
内的記憶テクニックは、
文字の語呂合わせや略語化により、記憶想起を図ろうとするものです。
例えば、
通販番組などで覚えやすいCMソングに乗せて商品名を繰り返したり、
語呂の良い電話番号をメロディーに乗せて放送したりするのも、
とりわけ高齢者の認知を得るためには効果的な手法といえるでしょう。
図形や色と記憶を結び付けるのも効果的です。
広大な駐車場には、戻ってきた時に場所を忘れないように
動物などのキャラクターのサインがエリア別に表示されていたりします。
これも記憶を強固にするための一手段です。
忘れやすさを防止するためには、感情と記憶をつなげるのが効果的です。
高齢者に思えてほしいことを、
個人の想い出として「エピソード記憶」化させれば記憶は強固になります。
単に情報として流すのではなく、
会話とともに覚えてもらう、
笑いや涙や美味しさなどの感情エピソードと一緒に記憶してもらう
といった手法が効果的です。
機能変化にどのように対応するか?
以上、高齢者の加齢に伴う様々な身体・感覚・認知機能の変化と
その留意点をまとめました。
便宜上、個々に分けて説明しましたが、
実際には、こうした症状や機能変化は同時に複数起きるものです。
今までの生活で当たり前にできていたことが少しずつ難しくなり、
負担を強いられるようになり、
さらに機能低下が進めば、要介護状態や認知症になる可能性が高まる。
本人の意思とは裏腹に身体動作がともわなくなり、
その結果、不意の転倒や骨折、予期せぬ大きな事故などに繋がっていくわけです。
高齢社会の課題を引き起こす原因の多くは、
加齢変化が引き金になってもたらされるといってもよいでしょう。
日常生活における困難が、
家庭内のものであれば「家族問題」の域に留まりますが、
困難を抱える人々が地域社会に多く存在するとなれば、
それは「社会課題」に発展します。
個々の困難にせよ、社会の困難にせよ、
高齢者の数が増えれば困難を抱える人の数も増加するので、
「加齢にともなう機能変化」によって困る人たちが今後もたくさん出てきます。
私たちは、様々な高齢者の変化内容をきちんと理解した上で、
どのようなことが可能で、かつ解決につながるかを考えることが重要です。
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