今、東京ではせんべろ街などの駅前のレトロな飲み屋街が消滅の危機にあります。
その原因が東京で多発している再開発です。
今、再開発ラッシュで、古き良き日本のまちなみが失われつつあります。
どうして東京では再開発が多発しているのでしょうか?
そしてなぜ再開発によってせんべろ街が消滅してしまうのでしょうか?
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目次
東京の人気スポット「せんべろ街」とは?

せんべろ街とは、
「1000円程度でべろべろに酔えるような酒場が集まったエリア」のことを指します。
安くて美味しい小さな居酒屋や立ち飲み屋が密集しているせんべろ街は、
サラリーマンから若者、最近では女性が外国人までにも人気のスポットです。
東京では赤羽、上野などが「せんべろの聖地」として知られています。
(※葛飾区・京成立石にあったせんべろ街は再開発によって既になくなりました…)
現在、このせんべろ街が消滅に危機にあります!
東京は再開発ラッシュで「せんべろ街」が消滅の危機に!

東京のせんべろ街消滅の原因は各地で行われている再開発にあります!
東京の再開発の総事業費は7兆円以上!
今、東京では再開発ラッシュを迎えています!
2025年3月現在、東京都内でまちの再開発が何カ所ぐらい行われていると思いますか?
答えは都内で63カ所。その全てを合わせた総事業費はなんと約7兆2000億円!
かつては「せんべろの聖地」のひとつとして有名だった、
葛飾区・京成立石の呑んべ横丁も再開発で無くなってしまいました。
京成立石では2023年8月に駅前再開発のための立ち退きが完了し、
立石周辺は総戸数約1850戸のタワマン街となり、
今では景観がガラッと変わっています。
なぜ東京は再開発が多発しているのか?
東京で再開発が多発していく理由は大きく以下の4つです。
- 木造住宅密集地域の防災力の向上
- 東京での人口集中による対応
- 駅前の利便性の向上
- 投資対象として魅力的なタワマンの存在
順番に解説していきます!
①木造住宅密集地域の防災力の向上
東京で再開発を多発している最大の理由は、
「もくみつ」すなわち木造住宅密集地域の存在です。
未だに東京の下町では火事は多く、
消防車が入っていけずに消火活動が遅れてしまう地域がたくさんあります。
来るべき大震災に備え、
せんべろ街のような木造家屋で燃えやすく耐震性がないところを再開発によって、
火災や地震の強いまちにしていこう、ということです。
②東京での人口集中による対応
日本全体では人口が減ってきていますが、東京は未だに人口が増え続けています。
この増え続ける人口の受け皿として再開発によって住宅の戸数を増やしていこう、
というもの。
東京のいたるところで再開発やタワーマンションで建設されているのは、
増え続ける人口の一部を少しでも自分たちの区に呼び寄せたい、
という行政側の目論見もあります。
すなわち人口の奪い合いのために再開発が行われています。
東京もいずれは人口減少すると言われていますが、
それまでの間、この自治体どうしの人口の奪い合いが行われ、
しばらくはこの再開発ラッシュは続くと思われます。
③駅前の利便性の向上
再開発によって駅前にある老朽化した低層の木造建物のエリアを、
中高層の新しいビルやマンションに生まれ変わらせることによって、
駅前の利便性を向上させようとする狙いがあります。
地域の防災力の強化や利便性の向上などを目的に、
再開発では行政側から多額の補助金が支払われることが一般的です。
④投資対象として魅力的なタワマンの存在
今、東京のタワーマンションは投資物件としてとても魅力的です。
とくに中国など海外の富裕層に東京のタワマンは人気で、
タワマンをつくればつくるほど売れているという状態が続いています。
デベロッパーや建設会社などの民間事業者側からすれば、
再開発は莫大な行政の補助金がもらえて、つくれば必ず売れるという、
まさにローリスク、ハイリターンな商売です。
さらに海外の投資家からしても東京のタワーマンションはとてもおいしい商品。
しかし、新築にもかかわらず
ほぼ居住実態のない空室が目立つタワマンが乱立する東京の今の現状に
警鐘を鳴らす専門家も多くいます。
東京・赤羽の「せんべろ街」も消滅する!?

そして今、再開発によって、
赤羽のせんべろ街も消滅するかもしれないという危機に見舞われています。
赤羽せんべろ街消滅問題
今、再開発でせんべろ街が消滅した京成立石と同じ問題に直面しているのが
「赤羽」です。
通称、「赤羽せんべろ街消滅問題」。
赤羽のせんべろ街は、赤羽駅の東口に位置していますが、
もともとは戦後に栄えた場所が1946年に復興会商店街になって
現在のせんべろ街に繋がっています。
赤羽駅前も再開発によって、
赤羽せんべろ街の一角にある地区にもタワーマンションが建つ予定になっています。
そこで今、社会問題化しているのが、
「呑兵衛の聖地」が再開発で金太郎飴化し、
どこにでもあるような画一的なまちになりがち、という問題です。
実際に再開発が行われたまちはどこも同じようなまちなみで無個性化しており、
かつては地域ごとに多種多様なまちなみが存在していた、
東京のまちの魅力がどんどんと失われていっています。
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赤羽に住む人の再開発に対する意見
赤羽の人はこの再開発についてどう思っているのでしょうか?
番組では赤羽のまちの人にインタビューしています。
- 再開発によってせんべろの居酒屋がなくなるのは反対
- 赤羽は飲み屋がある真ん中に小学校があり、大人も子供も共存できる場所は残してほしい
- 商店街がビルばっかりになっているのがさみしい
- 人情味あふれるあったかいまちがなくなるのはさみしい
- 再開発によって家賃が高くなるのが心配
せんべろ居酒屋がなくなることに反対の方が多い様子で、
他にも商店街の建て替えで人との触れ合いがなくなったり、
家賃が高くなったりすることに心配する方がいました。
一方、再開発の賛成の方の意見は以下のとおりです。
- 老人が結構多いため、駅の近くにいろんなものができれば、便利になっていい
- 都心が近くて若者が来やすくするためには、再開発が必要だと思う
- お店が古いとお客さんはなかなか入らない。新しいお店だと若い人たちが来るので大賛成。
- 古いものがなくなるのは仕方がない。
100人に聞いたところ、賛成が23人、反対が77人という結果に!
再開発は利便性が上がり、税収が増え、まちのさらなる発展が見込める一方、
ビルやタワマンだらけになりまちの個性がなくなることにさみしさを感じる声が多かったという印象です。
再開発が画一的なまちづくりになってしまう理由

ではなぜ、どの再開発も画一的なまちづくりになってしまうのでしょうか?
そこには再開発ならではの裏事情があります。
再開発では容積率ボーナスがもらえる
まちにはそれぞれ「容積率」が都市計画で決められています。
容積率とは、「敷地面積に対する延べ床面積の割合」のこと。
すなわち、「ここではこれくらいまでのボリュームの建物なら建てていいです」と
事前に決められているんですね。
しかし、あることをすると東京都から容積率のボーナスがもらえる、
つまり上限よりも高く建物が建てられることになります。
では、何をすれば容積率のボーナスをもらえるのか?
それはずばり「公共貢献」です。
公共貢献とは、
「公園・広場・子育て支援施設の設置、道路の拡張、劇場や駐輪場、住宅の建設など、地域のためのなる事業」のこと。
つまり都市政策としてやってほしいことを、
行政は民間事業者に対してニンジンのようにぶら下げて、
「再開発によって公共貢献をしてくれたらボーナスとして容積率を上げますよ」
というものを実施しています。
これは、
「まちのためにもなるし、民間事業者はボーナスで容積率ももらえるし、
お互いがウィンウィンになる」という考えでできたものです。
赤羽駅前の容積率は600%と都市計画で決まっていますが、
今回の再開発事業によって、
小さな広場と歩道、地域の人が使える駐輪場150台、
そしてタワーマンションをつくることで、
容積率が200%ボーナスされて、最終的に800%になります。
これは単純計算すると、
地上20階建てだったマンションが地上26階建てになる、ということです。
そもそも容積率は、道路や下水道などのキャパシティを計算して、インフラ等の負荷を考慮して決められています。しかし、上限ギリギリいっぱいで設定されているのではなく、本来は少し余裕がある設定になっています。
このように東京都の公共貢献のメニューをもとに再開発をしていくわけですが、
当然ながら「容積率ボーナスをゲットしやすい」
すなわち「効率がよくて利益率が高いメニュー」ばかりが
民間事業者によって選ばれがちになります。
そのため、
「今の再開発によって金太郎飴のような画一的なまちになってしまう」、
「どの再開発も似たようになる」という問題が出てきています。
再開発は高コストになりがちで、どこも同じテナントが入る
さらに再開発事業はコスト面でもシビアな現実があります。
再開発で造られたタワーマンションは、どうしても高コストになりやすいんです。
再開発のコストには、
もともといた地主さんやテナントさんの建物を解体する「解体費」であったり、
移転していただくための「補償費」などが、全部費用に上乗せされていきます。
再開発だと、更地にタワーマンションを建てるよりも、コストが高くなるのです。
そのため、再開発ビルができてしまうとテナント賃料が上がり、
せんべろ街に元々出店していた方はなかなか戻ってこれなくなります。
結果的に、再開発では同じような大企業のテナントが入ることとなり、
どこにでもある駅前ビルが誕生し、
個性が無くなったつまらないまちになってしまいます。
元々いた人たちに優しくできるのであれば
再開発にも良い側面がたくさんあるのですが、
そこがなかなか難しく、再開発の最大の課題となっています。
再開発が実施される地区では廃業する人がたくさん出てきてしまう可能性があり、
今住んでいる方たちからしたら死活問題となり得るのです。
まちの個性を活かした再開発の方法

それでは、
どうしたらまちの個性を活かした再開発ができるのでしょうか?
再開発ではもっと住民との対話を!
今の時点では赤羽のせんべろ街が全てなくなるのではなく、
せんべろ街の中心部分は再開発を含めて、
どのようなまちづくりをするのか、検討中の段階です。
必ずしも再開発で
せんべろ街が全てタワーマンションになると決まっているわけではありませんが、
他のエリアと同様に消滅するリスクは十分にあります。
再開発による公共貢献のメニューが、
時代や地域にあったフレキシブルなものに変わっていけば、
まちの個性を活かしたよりよい再開発が実施できるようになります。
そのためには、
公共貢献の内容がもっと住民の意見を反映しているものである必要があります。
東京都が準備したメニューだけではなく、
「地域と協働して住民の意見を取り入れる」
「せんべろ街の一部を残す」
などいろいろとやり方はあるのです。
「民間事業者が勝手になっていることだから…」
「地域のためにやっていることだから、黙って言うことを聞いてくれ!」
「難しくて話をしてもどうせわからない」
「いつかきっと理解してくれるはず…」
「法的には何の問題もない」
このように、残念ながら再開発では
行政や民間事業者の住民への説明が不足しているケースが大変多いのです。
少なくとも説明会や話し合いなどの出席は、住民側は無償なのにもかかわらず、
民間事業者や行政職員は給料をもらって働いている立場なのだから
もう少し丁寧な対応をする必要があるでしょう。
まちの個性を活かした再整備の成功例(下北沢の下北線路街)
まちの個性を活かした再整備の成功例としてあげられているのが、
下北沢駅周辺の下北線路街です。
区と電鉄会社と住民が何度も話し合いをし結果的につくられたのが、
タワーマンションはなく低層の建物がずらりと立ち並ぶまちなみです。
さらに高すぎない賃料設定にすることで、
店主の顔が見える個性的な店舗が集まりました。
これは地域とも共存し、
「サブカルのまち」下北沢らしさを残すことに成功している事例です。
地方にもまちの個性を活かしたまちづくりを
地方都市の中心部ではくたびれた商店街がたくさんあります。
このような状況を何とかしようと、
和歌山市や長崎市など、地方の中核的な都市でも再開発が行われています。
また、熊本の城下町は木造建物も多く、
2016年の熊本地震で崩れてしまったところもたくさんありました。
その後の復興で新しいマンションが建った一方で、
古民家を活かしたカフェなどもたくさん増え、
まちの文化は残しつつ、新しい文化も取り入れながら上手にやっています。
地震で多くの文化財が倒壊し、歴史あるまちなみに爪痕を残しましたが、
被災したまちなみを再生しようと、
地元の住民たちがプロジェクトを立ち上げ、
古民家を生まれ変わらせるなど、街の歴史を今に繋いでいます。
まちの個性と利便性が両立できる再開発を!

防災面や利便性などを考えると再開発を実施するメリットはたくさんあります。
しかし、再開発によってできるのがタワーマンションだらけの無個性なまちでなく、
個性的な店舗が増えるなど、そのまち独特の文化も継承される必要があります。
今回は再開発によってまちの個性が失われる話をしてきましたが、
まちの個性が失われるのは、何も再開発に限ったことではありません。
今、画一的な開発によって、日本のまちはどんどんと無個性化しています。
国道のロードサイド、大型ショッピングセンター、郊外団地、駅前再開発など
どこに行っても同じような風景が人がっています。
まちの個性と利便性の両立したまちづくりが今、求められています!
(※この話の詳しい内容は「カズと学ぶ」で紹介されています。詳しくはこちらをごらんください!今なら無料で視聴できます!)
その理由を、長年にわたりまちづくりの仕事をしてきた
私“ちゃぼけん”が解説していきます!