キャンプ、グランピング、温泉旅行など自然豊かな場所で遊びながら過ごすアクティビティがブームとなっています。
また、テレワークを活用し、普段の職場や自宅とは違った場所で仕事をしながら、自分の時間も過ごす「ワーケーション」を広がってきました。
さらに、自然豊かな場所で暮らしたいと考え、地方都市にある田舎のまちに移住する人も最近は増えてきいます。
そこにはかつてないほどのビジネスチャンスがありますが、
気をつけないと「魅力ある地域」を破壊することになってしまいます。
- 地方ではどのようなビジネスが求められているのか
- 大切な場所を守っていくためには、何に気を付けるべきなのか
今回はそんなことを解説していきます。
目次
地方がビジネスチャンスになっている
日本には全国各地に美しい場所が存在します!
富士山や屋久島などの「世界遺産」や、阿蘇や伊豆半島などの「ジオパーク」をはじめ、山、海、川、湖など美しい自然があちらこちらにたくさんあります。
一方で、美しい自然と共にある、農村や漁村などの中山間離島地域には住む人がどんどんと減ってきており、全国で「限界集落」や「消滅集落」が増え続けていると言われています。
そんな中、地域ごとの固有の美しい自然やまちなみ、伝統、文化、コミュニティなどに対する人々の関心が高まっています。
これは地方にある自然やまちなみを守り受け継いでいくチャンスでもありますが、反対にそれらを破壊する可能性も秘めているのです。
これらの地方の魅力に、金銭的な対価を支払ってでも享受したい、という消費者のニーズは近年ますます強くなっています。
このような潮流で、企業もそこに注目するのは必至です。
地方の各地にある美しい自然やまちなみ、伝統、文化などの多くは、高度成長期などでの経済発展の負の影響をあまり受けず、破壊されずに残ったものです。
しかし今では、東京をはじめとした大都市の企業にとっても利潤獲得のための重要な要素と見なされるようになりました。
国も押し進める「地方ビジネス」
「地域」をビジネスのフロンティアと捉えるこうしたトレンドは、政府の政策によって加速されています。
第二次安倍政権のもとで2014年からスタートした「地方創生」政策。
その背景にあったのは、「地方」の問題というよりは、「国」の危機感でした。
人口減少と社会保障費の増大に対応するために、地方経済を国の「負担」ではなく、所得を生み出す「投資先」へと変えていかなければならないという危機感から、地方の経済再生が課題とされているのです。
当時、安倍首相は「若者が将来に夢や希望を持てる地方の創生に向けて、力強いスタートを切る」と説明しました。
その後、「地方創生」政策では
- 地方に仕事を作り出し、安心して働けるようにする
- 地方への新しい人の流れをつくる
- 若年世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
- 時代の変化に合った地域をつくり、安心な暮らしを守る
- 地域と地域の連携を促進する
という目標を掲げました。
こうにして始まった「地方創生」ですが、本当に若者が将来に夢や希望を持てる状況になっているのか、安心して働けるようになっているのか、結婚・出産・子育てや暮らしの希望がかなえられているのかは疑問が残るところです。
それよりも、地方での暮らしが危険にさらされる可能性もあるのです。
地方ビジネスは、地域を破壊する危険性がある
「地域」をビジネスの場所と考えるこのトレンドは「農村空間の商品化」とも言われています。
地域固有のまちなみ、伝統、文化などは人々を惹きつける力を持っています!
農村だけでなく地方都市でも、歴史的な景観がまちの「魅力」の重要な要素になっているのです。
歴史的景観の価値は、単に鑑賞の対象というだけでなく、来訪者向けのビジネスや、土地価格などを通じて経済的価値も生み出しています。
保全の対象となるような伝統的まちなみに関心が集まるのは当然ですが、それだけではなく、地域の来歴を意識して地区を再開発したり、景観を新たに創出するなどの事業も進められています。
このように「地域」は、いまやビジネスのフロンティアになっています。
地域・空間が、単に経済活動が行われるスペースに留まらず、消費行為の文脈を作り上げる場となり、あるいは観光や映像などを通じて視覚的に消費されるという傾向が強まっているのです。
「地域」がビジネスのフロンティアとして浮上したことは、地域発展を願う地元の主体にとっては大きなチャンスであることは間違いありません。
しかし、それが行き過ぎると、様々な弊害をもたらします。
過度な観光地化や不動産開発などによって、地域固有の自然やまちなみ、伝統、文化などが破壊されてしまう恐れもあります。
過度な観光地化によって、消費される「地域」
地域固有の自然や景観、伝統、文化、コミュニティなどは、人々の営み、暮らしの積み重ねの結果として存在するからこそ「価値」があります。
つまり「本物」だからこそなのです。
その意味を学習し、地域のことをよく知れば知るほど、消費者にとっての「価値」は高まります。
その一方で、多くの消費者に手っ取り早く知識や情動を得たいという省力志向を有しています。
「本物」を見分けるためには本来、学習時間が必要ですが、手軽な消費を求める傾向が強まれば、その一部を切り取って単純化した「商品」のほうが幅を利かせることになります。
むしろ、そのほうが市場が大きくなり、収入は増え、観光地化が進んでいくでしょう。
観光客数が増えれば店の売上も増加しますが、地価の高騰や、局地的な過剰投資も起きており、自生によってまちの雰囲気を守ってきたコミュニティの秩序は危機にさらされています。
過剰な観光地化は、短期的な経済利益に流されやすい状況を創り出しました。
手っ取り早い消費には、「本物」ではない「作り物」が入り込む余地があります。
そして、「作り物」が増えていけば「本物」が駆逐されてしまうこともあり得ます。
地域に必要とされる地方ビジネスとは?
地方でビジネスを行うためにはまず、その地域固有の自然や景観、伝統、文化、コミュニティなどについて理解し、そこにある「本物の価値」について知る必要があります。
それを理解しないことには、地方でのビジネスは決して成功しないでしょう!
今や日本の住んでいる9割が都市に住んでいると言われています。
その都市住民が仕事の合間や短い休暇に、つかの間でも「ローカル」「地域」のよさにふれたいと願う人は多いようです。
その時に求められるものは、レジャーランドのような単なる「作り物」ではなく、それぞれの地域の歴史と人々の暮らしに根差した「本物」の体験です!
近年、消費スタイルは大きく変わりました。
高度成長期にはどんどんとモノ消費されていく「モノ消費」の時代でしたが、今や体験を重視する「コト消費」や再現性の低い「トキ消費」がメインとなっています。
農村地域でも、1990年ごろから、農産物の単なる供給地ではなく、都市住民によって直接「体験」「消費」される空間へと、その社会的意味合いが変化してきました。
農産加工や農家レストランなどの「農業の六次産業化」、グリーン・ツーリズムなどの都市・農村交流の動きが広がったのです。
これは、農村の暮らしの豊かさを自ら体験したいという都市住民のニーズに高まりを反映しています。
ボランティアで農地の維持管理を手伝うなどの農村訪問の形も増加しています。
地域固有の自然や伝統、文化を背景とした商品開発は、本来、どちらかといえば大企業よりも、地方の中小企業や個人に向ています。
そうした成功例は全国にいくつもあります。
地方の持続的な発展を目指して
こうした弊害を避けるためには、景観、伝統、文化などが、その地域の人々の暮らしに根差したものであることを、自覚する必要があります。
何が「本物」の価値なのか、何を守るべきで、そこからどう経済的利益を得るのかについて、つねに問いかけ直し、地域的な基準を設定することが必要となってきます。
地方を単なる消費の場として見るのではなく、地域固有の自然や伝統、文化を背景とした商品開発やサービス提供が求められています。
「地域の良さ」によって生まれるビジネスであるため、「地域の良さ」を守り、そしてさらにその地域の価値をさらに高めていくものが求められています。
地域固有の自然や伝統、文化は誰か個人の所有物ではありません!
そして特定の誰かに消費され消滅してよいものでも当然ありません。
そして、現代の消費者に求められているのは、その地域の「本物」であることを、決して忘れてはならないのです!
消費者の目が「地域」に向かい、ビジネスのフロンティアにもなりつつある現在、このチャンスを地域の価値を育てるために活かす視点と取組みが求められています。
そうしなければ、まちづくりを進めているように思っても、実際には地域の外の様々な力に振り回されるだけになってしまうかもしれません。
地域から未来を拓くために、地域の「本物の価値」を見つめ直すことが非常に重要なカギとなるでしょう。
あなたは、自分が住んでいるまちで本当に「やりたいこと」をできていますか?
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今、全国から地方へ熱いまなざしが向けられています。