「都会のまち」「地方のまち」「駅前のまち」「郊外のまち」
「歴史のあるまち」「新しいまち」「山に囲われたまち」「海の近くのまち」
「まち」と一言で言っても、いろんな「まち」があります。
「自宅があるまち」と「働いているまち」は全然違う場所にある、
という人も多いと思います。
まちのタイプが違えば、そこで発生する課題も違います。
まちづくりを行う場合は、
そのまちで発生している課題をうまく見極めることがとても大切になってきます。
ここでは、まちのタイプごとに異なる、
‟まちの課題”とその課題を解決するためのまちづくりの試みについて解説します!
目次
地域ごとに異なる‟まちの課題”
それでは、地域ごとに抱えている‟まちの課題”を見ていきましょう!
ここでは
「都心」「中心市街地」「密集市街地」
「郊外住宅地(ニュータウン)」「農山漁村」
の5つにで分けて解説していきます。
「都心」とは?
「都心」とは、市町村、都道府県、あるいは国を代表する
‟大都市の中心部”のことです。
「都心」は東京都だけにあると勘違いしている人も多いようですが、
「都心」は大都市の中心部という意味なので、
大阪や名古屋、福岡など、東京以外の都市にも「都心」はあります。
イメージとしては、
高層ビルが建ち並び、オフィスや商業施設などが集積しているようなエリアです。
都心は、地域の政治、経済、文化が集積するため、あらゆる立場の人々が利用します。
「都心」の主な課題
「都心」で課題となっているのは、主に以下のものです。
- 再開発が必要
- 他都市との競争
- 社会的孤立
①再開発が必要になっている
多くの場合、都心は歴史ある場所であり、
近現代には再開発が繰り返されてきたエリアでもあります。
現代は、高度経済成長期に建てられた建物が老朽化し、
その建替えや新たな再開発が必要な時期を迎えています。
②他都市との競争
都心は、常に‟他都市の都心との競争”にあるといえます。
移動の自由度と利便性が高いことが求められる流動的な社会では、
「選ばれるまち」であることが重要とされています。
③社会的孤立
これまで都心には、
主にビジネス機能の集積によって多くの人が訪れていましたが、
〈無縁社会〉や社会的孤立が進み、
まちへの関心やつながりが薄れつつあるなか、
新たな魅力を発信する必要が生じています。
「都心」で必要とされる‟まちづくり”
近年は都心は、
商業施設、オフィスを刷新して企業を誘致したり、
公園や文化施設を整備することで賑わいを創出したり、
オフィス街や官庁街は夜間や休日に余暇・レジャー施設として楽しめるように、
単一機能から複合的な機能をもつエリアとして変化していたりと、
新たな試みも生まれています。
社会の多様性に合わせて、
様々な立場や世代の人々が利用・交流できる場をつくることが求めらているのです。
また新型コロナウイルス感染の影響で、
全国的にテレワークなどが流行し、
現在はオフィスのあり方に変化が求められています。
このような変化に対応していけるかどうかが、
都心のまちには求められています。
「中心市街地」とは?
次に、中心市街地です。
都心は大きなまちの中心を指すのに対して、
中心市街地は「中小規模のまちの中心部」を指します。
「中心市街地」の主な課題
「中心市街地」で課題となっているのは、主に以下のものです。
- 商店街のシャッター通り化
- まちの機能の郊外化
- まちのアイデンティティの喪失
①商店街のシャッター通り化
かつて中心市街地は商店街が核となっていましたが、
シャッター通りのように、
1980年代から徐々に、各地の商店街では活気が失われています。
大きな要因のひとつに、郊外の大型ショッピングセンター開発が指摘されます。
中心市街地に比べて、広大な駐車場を併設し、
車で訪れることが容易な利便性が消費者に好まれたためです。
②まちの機能の郊外化
また、商業施設だけでなく、
市役所や文化施設が中心市街地の外へ移転する地域も多く、
中心市街地の衰退に拍車をかけました。
③まちのアイデンティティの喪失
高度経済成長期以降は、
全国の中心市街地で同じような画一的な開発が繰り返されてきました。
地域の歴史や文化が集積している中心市街地で、
まちの個性を活かしたまちづくりが今、求められています。
「中心市街地」で必要とされる‟まちづくり”
衰退が進む一方で、近年は中心市街地の価値を大きく見直されています。
人口減少と高齢化が進むなか、
まちが無秩序に広がることを防ぎ環境面にも配慮した
コンパクトシティ構想が盛んに議論されるようになりました。
人々が集まって居住すれば小さくまちまったまちで暮らしが完結し、
車を運転できない高齢者でも容易に利用できます。
同時に、私たちの生活スタイルや消費行動も大きく変化しています。
ネットショッピングや通信販売の利用がさらに拡大する現代、
中心市街地には商店街のような商業だけでなく、
住民同士がコミュニケーションを生み、活性化をもたらす、
まちのアイデンティティとしての新たな機能や役割も求められていると言えます。
「密集市街地」とは?
大きなまちの開発過程では、
まちの周辺部に、道路や土地利用が未整備のまま、
長屋や木賃アパート、小規模な戸建て住宅の密集した市街地が形成されました。
これを「密集市街地」と言います。
「密集市街地」の主な課題
「密集市街地」で課題となっているのは、主に以下のものです。
- 老朽化した住宅
- 災害の危険性が高い
- 既存コミュニティの分断
①老朽化した住宅
密集市街地にある住宅は、高度経済長期に建てられたものが多く、
すでに築50~60年以上となっています。
また、火災に弱い木造の住宅が狭いエリアにひしめき合っているため、
火災が発生した時に、一斉に燃え広がる危険性があります。
また、老朽化した木造住宅は地震や台風によって、
倒壊したり破損する可能性も高いです。
しかも1981年以前に建てられた建物が多く、
新耐震基準を満たしていない住宅がたくさん建ち並んでいるため、
各住宅の耐震補強が急がれます。
②災害の危険性が高い
密集市街地は、入り組んだ狭い路地や多様な空間利用など、
都心周辺特有の人々の生活と工夫が溢れているエリアではありますが、
防災面での課題を抱えています。
災害時に避難できる空間が少なく、
緊急車両の進入が困難なため、
災害危険が高い地域とみなされているのです。
そこで、〈土地区画整理事業〉などによって建物の不燃化を進め、
災害に対応する道路や公園を確保しながら、
エリア内の街区と敷地を整備することが必要と考えられています。
③既存のコミュニティの分断
防災化のための整備は必要ですが、
一方で整備された広い道路などによって環境が一変することにより、
身体スケールの路地空間が失われ、
既存のコミュニティが分断されるなど、負の影響も懸念されています。
「密集市街地」で必要とされる‟まちづくり”
先述したとおり、
密集市街地では防災面を強化するための取り組みが急務となっています。
しかし、災害への対応については、環境の整備が唯一の解決策ではありません。
災害時に必要とされる共助は、コミュニティの存在が前提となり、
密集市街地ならではのコミュニティによる防災、減災の取り組みは評価されています。
都市計画だけでなく、まちづくりという観点から課題を捉え、
まちの方向性を示すことが大切だといえます。
「郊外住宅地(ニュータウン)」とは?
高度経済成長期に、
都心に集中するサラリーマン世帯の受け皿として郊外に開発されたのが郊外住宅地、
いわゆる〈ニュータウン〉です。
「郊外住宅地(ニュータウン)」の主な課題
「郊外住宅地(ニュータウン)」で課題となっているのは、主に以下のものです。
- 急速な少子高齢化
- インフラの老朽化
- 空き家・空室の急激な増加
①急速な高齢化
まちの完成と同時に働き盛りの20~30代夫婦の家族が一斉に入居したまちは、
当初は若い家族が暮らすまちとして活気がありましたが、
半世紀が経過した現在、世帯の多くが同時に高齢者世帯となり、
ひとり暮らしの場合も少なくなく、生活面での様々な問題を抱えています。
②インフラの老朽化
また、人だけでなく建物や道路、上下水道といったインフラ整備も老朽化し、
改修コストなども深刻な問題です。
③空き家・空室の増加
ニュータウンでは高齢者世帯が多く住む一方、
その子ども世代は地域外へと出て行ってしまうケースが多くみられます。
そのため、ニュータウンの人口はどんどん減り続け、
住宅地では空き家が増え、集合住宅では空室が増加しています。
「郊外住宅地(ニュータウン)」で必要とされる‟まちづくり”
このような問題を受けて、
団地内の空き室や空き店舗を利用した高齢者の居場所づくりや、
若者との交流や支え合いを促進する仕組みなどが試みられています。
また、建物のリノベーションや、
緑地や公園などのオープンスペースの再編、
地元住民向けの交流施設の増設などを図る郊外住宅地も増えています。
今まさに、
既存ストックを活用したまち全体の取り組みが必要な地域といえるでしょう。
「農山漁村」とは?
最後は、農山漁村です。
日本にある農山漁村のほとんどが、今、人口減少に悩まされています。
農山漁村の過疎化はさらなる少子化と高齢化を招き、
将来にわたって人口減少が続くと予想され、
限界集落と化しているところも少なくありません。
「農山漁村」の主な課題
「農山漁村」で課題となっているのは、主に以下のものです。
- 過疎化
- 地域コミュニティの弱体化
- 荒れ地の増加
①過疎化
農山漁村の課題はなんと言っても「過疎化」です。
近代化以降、特に高度経済成長期は、
都市で必要とされる労働力の担い手として地方の若者たちが大都市へ転出しました。
その影響を真っ先に受けたのが農山漁村なのです。
集落面積の大きさに対して極端に人口が少ない状態、いわゆる過疎が生じています。
②地域コミュニティの弱体化
集落活動の担い手も不足すると、地域コミュニティが弱体化していき、
伝統行事の継承が困難となります。
まちの歴史や文化が消滅の危機にあります。
③荒れ地の増加
人口が減少し、過疎になった地域は、
空き家や空き地、耕作放棄地の発生も連鎖的に起こります。
土地が草木に覆われたり、野生動物に荒らされたりすると、
もとの状態に戻すことは大変困難になってしまいます。
「農山漁村」で必要とされる‟まちづくり”
人口減少や過疎に悩まされている農山漁村ですが、
近年あらたな若者の参入を中心に状況が変わりつつあります。
UIJターンや地域おこし協力隊への参加を通じて、
農山漁村で暮らす若者が増えているのです。
その背景には、自然へのアクセスのしやすさ、
田舎ならではの人とのつながりへの期待といった、
ライフスタイルや価値観の転換があるといえます。
また近年の若者はインターネットを駆使することで、
働く場所に囚われない人生設計ができることも大きく影響しています。
その結果、農山漁村では地域外から新たな人々が流入し、
新しい社会が築かれ、環境と経済の再生が試みられています。
さらに、移住には至らなくても、
地域にご縁のある人々が、他の地域から様々なかたちで活動を支援する動きも
顕著になっています。
まちづくりとは、地域の課題解決!
まちづくりの本質は、「地域の課題を解決する」にあります。
そのため、まちづくりの初動期には、
自分たちが住んでいる地域がどのような課題があり、
その課題がどうして発生しているのか、
どのようにしたらその課題は解決されるのか、を見極めることがとても大切です。
まちごとに抱えている問題は全然違うものです。
もちろん共有する課題もありますが、
深刻さや原因がまちや地域によって異なります。
これをうまく見極めることができなければ、
どれだけ頑張っても、思うような成果が出ず、
「自分たちは何のために頑張っているのだろう?」と途方に暮れ、
‟まちづくり”をすることがだんだん嫌になってしまいます。
‟成功している事例”をただ真似するだけでは失敗する!
まちづくりにおいて、よく聞く失敗例は、
他地域の成功事例といわれるものを、
そのまま自分たちの地域で真似することです。
このパターンは大体失敗します!
理由は「成功した地域」と「自分たちの地域」では
状況があまりにも異なっているからです。
また、「国や自治体は発表している成功事例」と言われるものは、
行政が出している補助金や支援策の正当性をアピールするものが多く、
決して他の地域で真似ができるような汎用性のあるものではありません。
国や自治体の情報だからと言って、
「結果」だけを見て、安易に模倣してしまうと、痛い目に遭うので気をつけましょう!
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あなたが住んでいる「まち」は、どんな「まち」ですか?